今日は午後から次第に激しい雨風になっていく中で猫達のお世話に回りました。
ゴールデン・ウィークに入ってからは普段にも増して猫達の無事や安全のため見回りもしながら、風邪やケガなど病気猫の薬治療、そして、いつ体調が急変して亡くなってもおかしくない老猫達もいますのでケアもして、たくさんの猫達にお腹いっぱい食べさせ、そしておじさん達や犬猫達への支援回りと長い時間のお世話に追われている日々です。
そんな日々の中で、悲しい出来事が起きました。
Otさんに会えた時はいつもホワンの様子を聞き、元気だと聞くと安心しました。去年の8月に手術してから体調も良く元気になってましたので良く食べていました。おじさんやホワン達へフード支援も欠かさずしながら見守っていました。
でも、4月に入ってからホワンに会える回数が少なくなり不安になりました。飼い主のOtさんも気にしていて、ホワンが帰って来る日と帰って来ない日があると言って、時々探す時がありました。
ホワンはこの辺りのボス格の猫ですので見回りをよくして行動範囲も広いです。最近は雨がよく降り、草も高く生い茂ってきて猫の姿を見つけるのに分り辛い事が多いです。
毎日どの猫達にも必ず会えれば安心ですが、多摩川という場所ではそうもいきません(私がお世話している猫達は私が来るのをお腹空かして待ってますので会えますが・・・)
ホワンに会いたいと探しながらお世話していました。
4月30日(月)、Otさんの小屋の前にホワンがいるのが見えました!! やっと会えたという嬉しさですぐにホワンの傍に行きました。
ホワンがおかしい・・・すぐ異変に気が付きました。ぐったりしているホワン、目も細く開ける程度で、しゃがみこんだまま動こうとしません。顔も体も小さくなり背中をさすると背骨が飛び出て腰骨も四角張って、骨と皮に痩せてしまってました・・・。
一体、ホワンに何が起こったのか・・・頭が真っ白になりました。体の隅々をチェックしようと見た瞬間、後ろ左足に大きな傷を負っていて、大きく硬くなって化膿が進み危険な状態でジュクジュクになっていました。猫同士の喧嘩でホワンは足を噛まれたようです。上下の犬歯により表、裏の肉球まで突き刺さっていて、かなり深い傷です。
Otさんに聞きました。すると、昨日(日曜日)の夜、ホワンは左右によろけながら、フラフラで戻って来たそうです。
6㎏以上あった体は見る影も無く痩せ細り、かなりの体力を消耗しているのが分りました。Otさんもあまりの変わりように困惑していました。でも必死に帰って来たホワンに少しでもなんとか食べさせていたそうです。
時刻は6時を過ぎていて、すぐに病院に連れて行きたい衝動に駆られましたが・・・私はまだ猫達のお世話が残っていて、それをストップしても、病院の時間に間に合いません。
切羽詰まった苦しい状況に追い込まれ、私も判断に迷いました。
昨日分かっていれば、今日病院に連れて行けたのですが・・・
こればかりは思うようになりません。24時間アニマルセンターがあるのですが、ここは藪医者なのでホワンを連れて行くと死にます。
ホワンが好きなフードを与えてみました。ホワンは弱々しく一口食べましたが止まりました。また違うフードを出して、ホワンが好きな物ばかりを出しました。また一口食べて、もうそれ以上は辛そうで無理でした。呼吸も少し辛そうにしていました。
傷の化膿の進行を少しでも止めたい、今私にできる事は抗生剤投与しかありませんでした。
何の抵抗もしないホワンの口を開けて抗生剤を飲ませました・・・ショックでした・・・。
ホワンの口、アゴが硬くなり始めてるのが分りました。これは危険な状態の猫達を看てきた人はお分かりだと思いますが、
口を開こうとする時に手に伝わってくる感覚、アゴがきしむように
開き辛くなっている状態でググッと力が要ります。とても危険な状態だと感じました。口の中も貧血で白くなっていました。
すぐにホワンの目を開いてチェックしました。目の動きも悪くなっていて精気がありません。病院に連れて行っても助からない場合もあり得ます。
ホワンを助けれないかもしれない・・・不安ばかりが頭をよぎりました。でも、ホワンは力を振り絞って戻って来たのです。
私は神様に祈りました。どうかホワンに奇跡が起こってくれますようにと・・・。
Otさんもホワンが心配で寝ないで看病していました。もし抗生剤が効いて奇跡的に少しでも回復すれば明日病院に連れて行けると思いました。本当は手術でお世話になった病院に連れて行きたい気持ちですが、火曜日が休みなのです。明日のホワンの状態に賭けるしかありませんでした。
5月1日、キャリーを持参して、ホワンの奇跡を信じて支援フードと、寝ずの看病をしてるおじさんの体調を気遣い食べ物や飲み物を買って持って行きました。小屋の戸を叩いてOtさんを呼ぶと、中から出て来たおじさんの沈んだ顔を見た時、全てを理解しました。
「小西さんが来る10分前に息を引き取りました・・・」
その言葉で全身の力が抜けてしまいました・・・
ホワンが死んだ・・・
ホワンの体は限界だったのです。
ホワンがおじさんの小屋に戻って来たのは、帰りたいというホワンの強い気持ちがあったからです。
ホワンをミースケと名前を付けて可愛がってくれて、親子の様に家族としてお世話してくれてた優しいOtさんの所に、死ぬ前にもう一度帰りたい、自分の家に帰りたい一心でホワンは決心し、残った力を振り絞って朦朧としながら足の激痛に耐え足を引きずり長い道のりを歩いて戻って来たのです。動ける力の全てを使い果たして。命懸けで帰って来たのです。
おじさんの膝の上でいつまでも静かに抱かれて、クシャミを三回したと思ったら、そのまま息を引き取ったそうです。苦しがるそぶりも見せず動かず安らかに・・・。
おじさんは箱にホワンを入れて見せてくれました。
死んでいるのが嘘のように、優しい顔で眠っているみたいでした。
おじさんの元に帰って、おじさんに抱かれ、最期を看取ってもらったホワンは幸せそうに見えました。
私は、「Otさん、ミースケを最期まで看取って下さって本当に有難うございました。感謝しています。ミースケは幸せそうな顔をしてます。」
Otさんは、「去年、小西さんにミースケを助けて貰ったのに、こんな事になってしまって、すみません。」と言ってました。
そして、死んでいったジッポやホワンの話になると、
「こんな場所で生きるのは本当に大変なんだ・・・」と
猫を失った悲しみと悔しさでOtさんは言った。
おじさんの言葉は自分の置かれた立場と可哀想な猫達の姿を重ねて
しみじみと語っているようでした。
経験した事の無い私達には分からない、深い意味があるのです。
一日も欠かさず毎日の見回りやお世話をしていても助ける事ができない事もあります。しかし、助けるチャンスがある時もあるのです。それは毎日現場に足を運ぶ事によってしかチャンスはありません。いつ何が起きるか分からない、だから一日一日を大事にしたいと思います。
捨てられた命であっても、おじさん達の優しさで助けられ生きるチャンスを与えられた猫達はまだ幸せな方です。
人に気づかれず、命を落としていく猫達がいる事を忘れてはなりません。
2007年の台風の時に生後3か月位の5匹の子猫達が木によじ登って枝の上で一日を過ごし、生き抜いてきた、その中の一匹がホワンです。一人ひっそりと孤独に小さなテントで暮らしていたホームレスさんが一匹の雌猫(マミヤ)を飼っていて、その猫が5匹を産んだのです。テントの中で子育てしていたマミヤ。
台風で多くの猫達が行方不明、命を落としました。毎日必死に猫達を捜していた私が、ある日、マミヤと5匹の猫がいるのを発見しました。6匹は飢えて必死に生きてました。私は台風後にこの6匹が捨てられたのかと思ってましたが、後にホームレスさんが飼っている猫だと分りました。
エサが足りずに飢えている猫達を見かね、飼い主のホームレスさん(中野さん)とお話をしてお世話をさせて頂く事になったのです。
毎日通って、猫達にたっぷりのエサを与えてお世話しました。
雨の日でも来る私に信頼を寄せて下さり、色んなお話をして猫達とおじさんをを支えていきました。そしてマミヤを不妊手術しました。マミヤは今も健在で毎日お世話しています。
ホワンも2007年からの毎日のお世話と見守りをしてきましたが、
ホワンは今年で5歳という若さでとうとう天国に旅立ってしまいました。
ホワンの体を何度も触って、ホワンがどんな時も一生懸命頑張って生きた事に対してお礼を言い感謝をしました。
大好きだったホワン、どんなに涙を堪えていても、自然に零れ落ち涙が止まりません。名残惜しいです。
Otさんは「今日はミースケと一緒に寝るんだ・・・」
と涙ぐんで言いました。
私は最後に、ホワンのおでこにおでこを付けて、
「Otさんとニコちゃんを天国からずっと見守っていてね」と言ってお別れをしました。
おじさんも私もホワンが帰って来てくれた事に心から感謝しました。ずっといなければ、どこにいるのかとずっと捜し続け、悲しく心配の日々が続きます。自分の膝の上でミースケを看取る事ができて本当に良かったとOtさんは言いました。
ミースケはおじさんに最後のお礼をしたかったのだと思います。
ホワンをもし、病院に連れて行けたとしても、
ホワンが病院で亡くなったら、私は後悔します。なぜなら、
飼い主さんであるOtさんがホワンの最期を看取りたいです。
ホワンも自分が死ぬ時はOtさんと一緒にいたいはずです。
皆さん、悲しい訃報をお届けして申し訳ありません。
私も落ち込んでいます。今日もホワンの事を思い
一睡もできませんでした。
皆さんにはホワンを見守って応援して頂いたお蔭で
去年は命を助ける事ができ、とっても元気になり
美味しいフードもたくさん食べれて、
ホワンも喜んでいました。それから8か月足らずで
天国に逝きましたが、その8か月間はホワンにとって
貴重な「生きる尊い時間」を与えて頂きました。
皆様には心から感謝しています。
いつも温かく見守って頂いて
本当に有難うございます。
小西美智子
I.M. 2012.05.03(木) 06:09 修正
必死の思いでおいちゃんの元へ帰ったホワン。
安らかに。
広い河川敷で誰にも看取られずに逝く命も沢山居るなか、最期の姿を見せてくれて有り難う。
おいちゃん、小西さんも、本当に有り難うございます。